リハビリテーション

リハビリを含めたトレーニングやサプリメントなどについても、どのような内容をどの程度試すと有効なのかも確立した所見はありません。古くは神経筋難病の患者さんに過度の運動は「過用」と呼ばれて、筋肉を疲労させ過ぎて、回復不能なダメージを与えると恐れられていました。しかし、最近は筋力トレーニングを行った方が良いと考えられるようになりつつあります。負荷のかけ方は症状の程度によって加減する必要があります。

理学療法や作業療法を行うことによって、CMTの症状に対処することができます。内容は症状の進行度と対象者の年齢により異なります。治療目的は、対象者の日常的に行っている能力を伸ばすことや、快適さを目指すところにあります。

病院でのリハビリテーションは、平成19年4月から日数の制限無く受けることが出来るようになりました。治療上有効であるかどうかによって、1ヶ月間に受けられる訓練の総時間数が変わります。残念ながらリハビリテーションが有効でないと判断された場合は1ヶ月に260分間程度しか訓練が出来ない場合があります。そして、すべての病院でCMTの患者さんの対応が出来るとは限りません。特に開業医でなく病院の場合は、外来通院の患者さんよりも入院患者さんの方を優先して、リハビリテーションを行っている所が多く、患者さんの希望通りに時間を割いてもらえないこともあります。事前に相談をされた方が良いでしょう。

理学療法・作業療法

理学療法は、主に足や全身の大きな動きを訓練します。作業療法は、手などの細かな動き、或いは日常のトイレ入浴などの動作を訓練します。筋や靱帯のストレッチ、持久力強化のトレーニング、中等度の有酸素運動などを行います。パワーリハビリテーションを謳って、スポーツ施設のような筋トレマシンを設置している医療機関もありますが、大抵は日常動作が困難な、脳卒中などの患者さんや、骨折などの怪我をされた患者さんを主な対象にしています。その場合、CMT患者さんが期待するトレーニングは受けられない可能性もあります。軽症の方の場合には、定期的に脳神経内科医、リハビリテーション医、理学療法士や作業療法士に経過を見てもらいながら、トレーニングはスポーツ施設で行った方が効果は上がるかもしれません。

以下、リハビリテーションの内容について、ご紹介します。

『ストレッチと筋力トレーニング』
筋力の低下は全身で平均的に進みますが、それぞれの関節で曲げる筋肉と伸ばす筋肉のどちらかの方がより弱くなることが殆どです。足首の関節はつま先を下げる方向と内側に向く方向に変形しやすく、手の指は伸ばしづらくなります。バランスが乱れた状態で不適切に関節を使うと、痛みやまめなどの二次的障害を引き起こすことがあります。ストレッチは、それらの予防や軽減に有効で、筋萎縮などの症状が進む前から行うとさらに有効です。筋力トレーニングは、手足、体幹筋で全体的に行うことによって、手指の器用さや歩行のバランスなどの機能を維持することにつながります。輪ゴム、洗濯バサミ、トレーニングチューブなど道具を用いれば自宅でも簡単に行うことができます。以下の動画サイトでストレッチ、筋力トレーニングの方法が紹介されています。

https://www.youtube.com/user/CMTAssociation

『持久力強化・中等度の有酸素運動』
健康な人には軽微な、日常生活における様々な活動も、筋力の落ちてしまったCMTの患者さんには負担が大きくなり、かなりの疲労感をもたらします。軽めの負担で出来るだけ長い時間、持久力強化トレーニングでスタミナを向上させることで、疲労感の軽減を図ることができます。
CMTの症状から来る二次的障害の中でも、心肺系や全身の健康維持は欠かせないものです。また、運動不足による体重の増加は膝や股関節、足首などへの負担が心配となります。そのために重要なのが中等度の有酸素運動です。ジョギングやウォーキングのような筋や関節の破壊を助長するような運動よりも、自転車や水泳のような衝撃の少ない運動が良いとされています。CMTの患者さんは運動不足になりやすいので、肥満や生活習慣病、メタボリックシンドロームを予防することが大変重要です。

サプリメント

ビタミンC(アスコルビン酸)の治験が行われていることや、クルクミン(ウコンの主成分)、クレアチンがCMTに対して有効であるという研究がなされていることから、自主的にサプリメントを購入摂取しているCMTerは多くおられます。

サプリメントに関しても残念ながら、治療薬として効果が確定されたものはありません。サプリメントでも副作用を示すことがあります。そのため、具体的な摂取法を医療機関から指導されることは稀です。

<監修:京都府立医科大学脳神経内科能登祐一>